技能実習生を受け入れたいと考える企業からは、次のような疑問や不安の声が多く聞かれます。
- 自社の規模では何人まで受け入れ可能なのか分からない
- 優良認定を受けた場合、人数枠がどのように変わるのか知りたい
- 在留資格や試験の管理など運用面に不安がある
本記事では、常勤職員数に基づく受け入れ人数の上限、優良認定による拡大枠、さらに業種別の最新動向を解説します。制度の正しい仕組みを理解し、適切な人数管理を行うことで、安定した制度運用と実習生の定着につなげることができます。
技能実習生の受け入れ人数とは?制度上の位置づけと
基本ルール

技能実習制度における人数制限の背景
外国人技能実習制度は、開発途上国の人材に対し、日本国内で技能を移転することを目的とした制度です。この制度の適正な運用を確保するため、実習生の受け入れには法的に人数制限が設けられています。
制度上、受け入れ人数が無制限であれば、実習の名目で安価な労働力として外国人を大量に受け入れてしまうおそれがあります。こうした乱用を防止し、技能移転という本来の目的を担保するために、企業の規模に応じた上限数が明確に定められているのです。
また、技能実習は1号・2号・3号と段階的に進む仕組みであり、それぞれに人数や期間の制限があります。これにより、制度の透明性と実効性が保たれています。
団体監理型と企業単独型による違い
技能実習生の受け入れには、主に2つの方式があります。
- 団体監理型:監理団体が中心となり、企業は「実習実施者」として技能実習生を受け入れる方式。日本国内で最も一般的です。
- 企業単独型:過去に技能移転実績がある企業が、海外の現地法人などを通じて直接受け入れる方式。
団体監理型は、常勤職員数に応じた受け入れ上限が明確に定められており、制度の標準的なモデルです。一方で、企業単独型は実績要件や体制が厳しく、採用企業は限定されます。
どちらの方式でも、受け入れ人数の管理と適切な指導体制の整備が求められます。
技能実習1号・2号・3号での枠の扱いと変化
技能実習制度は3段階(1号・2号・3号)に分かれており、それぞれの段階で在留期間や人数上限が異なります。
- 技能実習1号:入国1年目。本格的な技能習得前の初期段階。人数枠の基準は1号実習生に適用。
- 技能実習2号:2~3年目。一定の基礎スキルを習得した段階。受け入れ枠の多くはこの段階に属します。
- 技能実習3号:4〜5年目。より高度な技能習得を目的とし、2号修了後に移行可能。受け入れには要件あり。
1号・2号で受け入れた実績がある企業であれば、3号への移行も可能ですが、条件として「優良な監理団体」「優良な実習実施者」に認定されていることが必要です。つまり、人数枠の拡大は実績や運用体制の信頼性に基づく制度設計となっています。
受け入れ枠の計算に使われる常勤職員数とは
受け入れ人数の計算に使われる基準は、企業の「常勤職員数」です。常勤職員とは、1週間の所定労働時間が正社員と同じ、またはそれ以上であり、継続して勤務している職員を指します。
この常勤職員数をもとに、以下のような基準で受け入れ枠が決まります。
常勤職員数 | 技能実習生の人数 |
30人以下 | 3人 |
31人~40人以下 | 4人 |
41人~50人以下 | 5人 |
51人~100人以下 | 6人 |
101人~200人以下 | 10人 |
201人~300人以下 | 15人 |
301人以上 | 常勤職員総数の20分の1 |
企業規模別|技能実習生の受け入れ人数上限
常勤職員数に応じた人数制限の基準
技能実習制度では、企業の常勤職員数に応じて受け入れ可能な技能実習生の人数上限が細かく設定されています。これは制度乱用を防止し、適正な技能移転を確保するための仕組みです。
具体的には、団体監理型において以下のような基準が定められています(一般枠)
常勤職員数
- 30人以下:3人
- 31〜40人以下:4人
- 41〜50人以下:5人
- 51〜100人以下:6人
このように、職員数に比例して段階的に上限が増えていきますが、過度な受け入れによる負担や適正な指導体制の確保が難しくならないように制御されています。
参照 ▶ 技能実習制度 運用要領
優良認定を受けた場合の拡大枠
「優良な監理団体」および「優良な実習実施者」として認定されると、受け入れ枠が通常の2倍に拡大されます。これは、過去の適正な実習運用や、技能実習評価試験での合格率などを基に、出入国在留管理庁・外国人技能実習機構(OTIT)が評価します。
※ OTITは監理団体の許可や実習計画の認定、監督指導、不正の是正、技能実習生からの
申告受付など、制度全体の品質管理を担う機関です。▶ 参照:外国人技能実習機構
たとえば、常勤職員が30人の企業の場合
優良認定の取得は、企業側の努力や実績が必要ですが、中長期的な人材育成と体制強化にとって大きなメリットとなるため、制度活用を本格化させたい企業には推奨される対応です。
年間採用計画と複数年計画での枠運用
技能実習の受け入れ人数は、年間ベースでの採用計画に基づき策定されますが、制度上は
1号→2号→3号と続く最大5年間のスパンを想定する必要があります。
実際の現場では、毎年一定数の新規実習生を受け入れ、2年目以降の継続者と組み合わせてトータルの人数を管理する企業が多くあります。これにより、現場の教育負担や実務への支障を最小限に抑えながら、技能移転の継続性を保つことができます。
また、3号への移行者が出るタイミングで在留人数が増加する場合もあるため、事前に実習計画と在留資格管理を整備しておくことが重要です。
業種別にみる技能実習生の受け入れ人数傾向
建設業・介護・製造業などの受け入れ状況
技能実習制度の適用対象となる職種・作業は、91職種168作業(2025年時点)に及びますが、受け入れ実績が多いのは以下の業種です。
- 建設業:22職種33作業。とび職、型枠施工、建築板金など。需要が高く、受け入れ人数も安定。
- 介護:その他21職種39作業のうちの 1つが介護。高齢化に伴い受け入れが拡大中。
- 製造業(機械・金属):17職種34作業。自動車部品、溶接、鋳造など幅広く対応。
参照URL ▶ 厚生労働省
特に建設業は、人手不足と専門的技能の両面でニーズが高く、技能実習制度による技能移転の意義も大きいため、実績数としても全国上位を占めています。
業種により異なる制度上の条件や傾向
同じ技能実習制度でも、業種ごとに設定される技能評価試験、講習、生活指導体制などが異なります。たとえば介護分野では、言語能力(日本語能力試験N4相当以上)や倫理教育が必須とされています。
また、製造業では評価試験の頻度や実技内容が作業ごとに異なり、導入コストにも影響します。そのため、単に受け入れ可能という基準だけでなく、自社の業務内容に合致した職種選定と実習計画設計が重要となります。
業種ごとの実績数はOTITや出入国在留管理庁の統計でも毎年公表されており、今後の動向を確認する材料として活用できます。
※ OTITは監理団体の許可や実習計画の認定、監督指導、不正の是正、技能実習生からの
申告受付など、制度全体の品質管理を担う機関です。▶ 参照:外国人技能実習機構
制度運用上の注意点と人数管理における課題
不適切な人数設定による実習不適正リスク
技能実習制度では、技能実習生に対して適切な技能移転・教育体制が整っていることが求められます。人数ばかりを優先し、受け入れ体制や指導員の数が不足している場合、「実習計画の不適正」と判断されるリスクがあります。
たとえば、1名の指導員に対して過度な人数の技能実習生を担当させると、実習内容の形骸化や、安全衛生上の問題が生じかねません。団体監理型の監理団体や外国人技能実習機構(OTIT)からの監査でも、重点的にチェックされるポイントです。
※ OTITは監理団体の許可や実習計画の認定、監督指導、不正の是正、技能実習生からの
申告受付など、制度全体の品質管理を担う機関です。▶ 参照:外国人技能実習機構
また、受け入れ人数と比して生活指導体制(住環境、メンタルケアなど)が不十分な場合、技能実習生の離職やトラブルの原因になることもあります。
実習生の在留資格管理・更新忘れなどの運用ミス
技能実習制度では、1号から2号・3号への段階的な移行が前提とされていますが、その過程では在留資格の更新や技能実習評価試験の合格が必要条件となります。これらの申請・更新手続きが適切に行われない場合、在留資格の失効や不法滞在など深刻な問題につながります。
特に、受け入れ人数が増えてくると、各実習生ごとの在留資格・契約期間・試験スケジュールを正確に管理する必要があり、制度理解が不十分な企業では混乱が起きやすいポイントです。
このような課題を防ぐためには、監理団体との連携を強化し、年間のスケジュール管理や申請のタイミングを明文化しておくことが重要です。
数字管理の難しさと「制度への誤解」
企業の中には、技能実習制度を「労働者確保」の制度と誤認しているケースが見受けられます。しかし、制度の目的はあくまで「開発途上国への技能移転を通じた国際協力」であり、安易に人数確保の手段として用いるべきではありません。
そのため、受け入れ人数を単に「多く確保したい」ではなく、実習目的・技能内容・教育体制のバランスを前提に設定することが求められます。
制度に対する誤解を防ぐには、団体監理型の支援やOTITなどからの制度説明会を積極的に利用することが有効です。
※ OTITは監理団体の許可や実習計画の認定、監督指導、不正の是正、技能実習生からの
申告受付など、制度全体の品質管理を担う機関です。▶ 参照:外国人技能実習機構
手続きと制度活用の手順
技能実習制度を通じて外国人材を受け入れる際には、受け入れ人数の上限・制度要件・在留資格の管理・試験対応など、多角的な対応が求められます。以下は、制度活用のための基本的なフローです。

また、優良認定による枠拡大を目指すことで、より柔軟な制度運用が可能になります。このためには、試験合格率・監査対応・生活支援の充実など、包括的な管理が必要です。
まとめ
技能実習制度における受け入れ人数は、企業の常勤職員数を基準に法律で厳密に定められています。建設業や介護業、製造業など、業種ごとの特徴や制度上の要件にも配慮しながら、適切な受け入れ体制を構築することが求められます。
制度活用の成功には、人数枠の把握だけでなく、在留資格の更新管理、技能評価試験の準備、生活支援体制の整備といった総合的なマネジメントが欠かせません。
オープンケア協同組合では、監理団体としての豊富な実績を活かし、技能実習制度の円滑な導入から運用までを一貫してサポートしています。初めて技能実習生を受け入れる企業様にも、安心して制度活用を進めていただける環境をご提供しています。
技能実習制度の受け入れ人数や制度運用についてお悩みの企業様は、ぜひ一度オープンケア協同組合までご相談ください。常勤職員数に基づく人数算定や、優良認定に向けた支援、技能実習計画の作成サポートなど、実績豊富な監理団体が丁寧にサポートいたします。