近年、多くの中小企業が人手不足に直面しています。特に、建設業や製造業、飲食業などでは、慢性的な人材不足が深刻な課題となっています。しかし、外国人労働者の雇用に対する理解や準備が進んでいない企業も多く、技能実習生の受け入れを検討したことがない経営者の方々も少なくありません。
この記事では、外国人技能実習生の制度やそのメリット、導入の手順について詳しく解説し、人手不足解消のための有効な選択肢として技能実習生の活用を提案します。
技能実習生の導入が中小企業に与える影響とは?
外国人技能実習生制度は、1993年に創設されました。外国人を日本で雇用することで、日本の技術や知識を発展途上国に提供し、経済発展に寄与することを目的としています。外国人を労働力として活用することを目的とする趣旨の制度ではありません。しかし、中小企業にとっては労働力不足の制度解消につながるものとして注目されています。
外国人労働者が人手不足を補う具体例
現在ではさまざまな業種や業界で人手不足が深刻化しており、中小企業においては特に顕著です。年齢の若い労働者をなかなか確保できず、高齢化が進んでいる中小企業も少なくありません。60代から70代の労働者は、大企業では全体の1割強にとどまります。これに対して中小企業では、大企業の2倍程度の割合を占めているという状況です。
中小企業では、求人を募集してもなかなか応募者は集まりません。特に若年層の労働者を採用するのはかなり難しいのが実情です。製造業や建設業、介護などの業種においては日本人の若年層には敬遠されがちなうえに、少子化の影響で若年層の絶対数も減少しています。
そのような状況を打破するための手段としては、外国人労働者の採用に注力することが重要です。
介護事業を営んでいるある中小企業では、2019年に特定技能制度が創設されて以降、特定技能外国人の採用に力を入れてきました。採用後も、外国人労働者との信頼関係を重視した人材育成をすることで、順調に外国人労働者が増えたそうです。2022年1月時点では24人もの外国人労働者が働いています。
技能実習生の制度とは?
外国人技能実習生の制度を活用するには、制度について詳しく理解しておく必要があります。では、技能実習生制度の基本的な仕組みについて見ていきましょう。
技能実習生制度の基本的な仕組み
技能実習生制度は、国際貢献のために日本が持つ技術を発展途上国に移転させることを目的としている制度です。外国人技能実習生は、日本で働くことで自国では習得が難しい高度な技術や知識を身につけることができます。
技術や知識を身につけた後は、帰国して自国の発展に活かすという具合です。そのため、技能実習生として日本で働ける期間は最長でも5年と定められています。技能実習は、入国してからの年数により、在留資格が1号から3号までの3ステップに分かれています。
このうち技能実習1号は、入国1年目の技能実習生を対象としている在留資格です。最初の2か月間は、まだ雇用しない形で座学による講習を実施します。講習は企業が単体で実施することも、監理団体が実施することも可能です。講習が終了したら企業が雇用したうえで実習を行います。
2年目に入る際には、技能実習生2号への在留資格の変更が必要です。職種により制限があり、公的な技能評価制度が整備されていなければなりません。また、技能評価試験に合格する必要があります。技能実習生2号で働けるのは、3年目までです。また、2年目終了時に在留期間の更新を行います。
3年目に入る際には技能実習生3号への変更が必要ですが、2号の場合と同様に技能評価試験に合格しなければなりません。技能実習生3号の在留資格を取得できたら、5年目まで日本で働けます。また、4年目終了時に在留期間の更新が必要です。5年目が終了したら帰国します。
技能実習生受け入れに向けた準備
技能実習生の受け入れをする際には準備が必要です。では具体的にどのような準備を済ませておけばいいのか見ていきましょう。
受け入れのための必要な手続き
企業が技能実習生の受け入れをする際には、技能実習計画の認定申請をしなければなりません。技能実習開始予定日の6か月前から4か月前までの間に済ませておく必要があります。
提出後に審査が行われ審査結果の認定通知書が交付され、厚生労働省と法務省にも審査結果の情報が共有されます。審査に通らなかった場合でも通知書は交付される仕組みです。
無事に認定を得ることができたら、在留資格認定証明書の交付を受ける手続きに移ります。地方入国管理局に交付申請を行いましょう。このとき認定通知書を添付する必要があります。
在留資格認定証明書の交付を受けたら、送り出し機関に送付しましょう。技能実習生が入国する際に提示を求められます。
技能実習生の受け入れをした後には、企業は技能実習法や労働基準法を守らなければなりません。最低賃金や同一労働同一賃金の原則も守る必要があります。同じ仕事に従事している日本人の労働者と賃金や待遇で格差が生じないように注意しましょう。
また、期間中は技能実習日誌を毎日作成する必要があります。技能実習日誌というのは、技能実習生に対して行った指導内容や、従事した仕事について記録するものです。実際に従事している仕事の内容が技能実習計画と違っていないかどうか確認するのに用いられます。
技能実習生の効果的な活用方法
技能実習生を受け入れる企業の多くは、上手く環境整備をすることで、技能実習生の技術を習得させることも可能です。では、どのような点に着目して環境整備をすればいいのか見ていきましょう。
実習生の定着と業務の効率化
技能実習生は、技術の習得と並行して、日本語を習得し日本の文化に馴染む必要があります。日本語の習得が難しい場合や日本の文化になかなか馴染めない場合には、辞めてしまう可能性もあるでしょう。技能実習生が定着しやすいように、日本語の習得をサポートする取り組みが必要です。
例えば、漢字にふりがなを付けるようにすれば、技能実習生も少しずつ日本語を理解できるようになってきます。仕事で説明などをするときにも、あまり難しい言葉は使用しないことが望ましいです。
また、文化の違いにより日本人とは物事の考え方が違う面もあることに留意しておきましょう。日本では非言語のコミュニケーションが多いため、外国人にとっては戸惑う可能性もあります。曖昧な表現や察するというようなことは多くの外国人にとって、あまり得意ではありません。暗黙の了解などに関しても外国人には理解できないことがあります。
日本人にとっては当たり前のことでも、技能実習生がよく理解できていないようであれば明確に説明することが大切です。「前向きに検討する」のような曖昧な表現を用いるのは極力避けましょう。できるかできないか、YesなのかNoなのか明確に断言する表現をした方がよく理解してもらえます。
文化の違いを理解したうえで指導することで、技術の習得もスムーズにいきます。現場で即戦力として使えるようになるでしょう。
まとめ
技能実習生制度は、発展途上国の経済や産業の発展に寄与する目的の制度ですが、技能実習生の受け入れには手続きが必要で、企業側が守らなければならないルールも多いです。受け入れ後にも、技能実習生が働きやすい環境を整える必要があります。
制度の内容をよく理解したうえで、技能実習生受け入れの準備を進めていきましょう。

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