昨年も日本の出生率は低下し、2016年から一貫して減少を続けています。少子化が進む中、労働力となる若い世代の人口が減っており、さまざまな業界において人手不足が深刻化しています。
特に、中小企業の労働力不足の問題は厳しい状況となっています。しかし、人手不足に悩む中小企業が多い中、技能実習機構を活用し、労働力を確保しているケースがあるのも事実です。
そこで今回は、技能実習機構を活用した労働力確保の取り組みについてご説明します。
人手不足が経営に与える影響とは?
人手不足は企業経営に大きな影響を与えます。特に、大企業に比べてリソースに乏しい中小企業では人手不足の影響は、深刻化しています。
中小企業が直面する現状
中小企業庁が2024年5月に公表した「2024年版中小企業白書・小規模企業白書概要」では、新型コロナウィルスの感染拡大が落ち着き、売上が回復しているものの、人手不足が深刻化している企業が多いと示されています。
また、従業員の年齢割合を見ると、会社の規模が小さいほど、60代や70代の高齢の労働者の割合が高くなり、20代以下の若い労働者の割合が少なくなっている現状も公表されています。
例えば、従業員が300人以上の企業では、従業員のうち60代以上の従業員の割合は10%、つまり、約90%が59歳までの従業員で占められています。
しかし、従業員4人以下の企業では20代以下の割合は6.2%程度で、60代と70代以上の従業員が37.7%も占めているのです。高齢の従業員が仕事を引退しなければならない状況になった時には、中小企業では経営自体の存続が難しくなってくるでしょう。
また、人手不足が進めば、今いる従業員への負担が増加します。残業が増え、休暇を取得しにくい状況になれば、離職を考える人も増え、さらなる人出不足を招くという悪循環が生まれるでしょう。さらに、時間的な余裕がないために新たな能力開発の機会が減少すれば、従業員のやりがいや意欲も低下し、経営に大きなダメージを与えることになります。
人手不足が続く業界の現状
人手不足はさまざまな業界で問題となっていますが、特に以下の業界で人手不足が顕著です。
- 建築業
- サービス業
- 医療・福祉業
- 運輸業 など
例えば建設業では、人材不足を解消するため、働き方改革を進め、長時間労働の是正や休日の増加などに取り組み、若い世代の新規就労を促進しようとしています。
また、AIやICTなどを活用した作業の効率化や安全性の強化を図り、生産効率を向上させ、人材不足を補う取り組みも行われています。しかし、建設需要は拡大しているため、常に人材が不足している状況に変わりはありません。
技能実習機構(OTIT)の役割とは?
技能実習機構の正式名称は「外国人技能実習機構」です。外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律に基づき、2017年に設立されました。
技能実習制度の基本的な仕組み
技能実習制度とは、日本で技術や知識、技能を身につけ、自国に戻って経済発展に寄与できる外国人の人材育成を目的とした国際貢献の制度です。
技能実習制度を受け入れる仕組みには2つの方法がありますが、多くの場合、団体監理型と呼ばれる方法が利用されています。団体監理型では、送り出し機関の募集に応募した候補生を監理団体が選考し、監理団体と契約をしている企業が実習生を受け入れ、実習計画に基づき実習を実施するという仕組みです。
技能実習制度を利用するメリット
技能実習制度には、技能実習1号、2号、3号の在留資格があり、第1段階である技能実習1号には対象となる職種の制限がないため、さまざまな業種の企業が利用できます。
また、技能実習生はやる気のある若い世代が多く、熱心に実習に取り組み、技術を習得していきます。技能実習制度は最大で5年まで在留が可能なため、受け入れ企業は一定期間、積極的に技術を身につける若い実習生の力を借りることが可能です。
技能実習制度は、国際貢献を目的とした制度ではあるものの、安定した人手を確保できる点も技能実習制度を利用するメリットの一つといえるでしょう。
オープンケア協同組合では、技能実習制度の活用を検討されている企業のサポートを行っています。技能実習制度についての詳しい情報はお気軽にお問い合わせください。

\お客様相談センター(06-4708-6750)/
技能実習機構(OTIT)が提供するサポート内容
技能実習機構では、監理団体の許可と技能実習計画の認定を行っています。技能実習機構のウェブサイトには、技能実習計画認定申請に必要な書類や実習実施者の届出など、技能実習を実施するにあたって必要な書類のダウンロードが可能です。
また、各言語での安全対策マニュアルなども準備しているほか、実習実施機関からの相談なども受け付けています。
外国人技能実習生の受け入れ準備
外国人技能実習生の受け入れを希望する場合、手続きなど準備しなければならないことがあります。
外国人実習生を受け入れる際の注意点
外国人を実習生として受け入れる場合には、まず法的手続きをしっかり行い、適正な契約を結ぶことと、技能実習生のフォローアップ体制を整えることが大切です。
雇用契約や法的手続きのポイント
技能実習計画書など、必要書類を作成し、外国人技能実習機構へ申請を行います。計画が認定されたら、技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員を常勤の従業員の中から選出します。
また、技能実習生が理解できる言語で雇用契約書を発行する必要もあります。労働契約期間や就業場所、賃金、労働時間等、必要事項を記載します。技能実習生の場合、監理団体での研修が終了した後に労働契約を締結することになります。
労働契約期間については、配属完了後から効力が発生することが分かるように記載しておきましょう。
技能実習生のサポート
技能実習生の受け入れにあたり、企業側は実習生が住む住居や生活に必要な用品の準備をしなければなりません。住居については、1人あたり寝室床面積が4.5㎡以上、トイレやシャワーなど日常生活が不便なく遅れる設備が整っている等の条件があります。
また、技能実習生も社会保険の加入対象となるため、必要な手続きを忘れないようにしましょう。
技能実習機構を通じて成功した事例
技能実習機構は技能実習生を受け入れる企業のサポートも行っています。中小企業が技能実集機構を活用し、技能実習生の受け入れに成功した事例をご紹介します。
中小企業での成功事例
A社では、技能実習生の受け入れにあたり、技能実習機構への相談を行いました。
実際の企業が得たメリット
技能実習計画の認定申請にあたり必要な書類等の準備が複雑であったため、書類の準備などについて相談を行いました。また、外国人実習生を受け入れるにあたって準備しておくべきことなどについても相談し、注意点などを詳しく説明をしてもらったため、初めての実習生の受け入れでしたが、スムーズに準備を進めることができました。
外国人労働者が活躍する具体的なシナリオ
技能実習機構では、実習を終了して帰国した実習生に対し、帰国後の就職状況などについてのフォローアップ調査を行っています。調査結果によると、実習生の7割近くは習得した技能を活かし、実習と同じまたは、同種の仕事に就いていることが分かります。
また、帰国後に起業した人も1割程度おり、日本での実習が帰国後の仕事に役立っていることが分かるでしょう。
まとめ
技能実習制度を活用し、外国人実習生を受け入れることは国際貢献にもつながると共に、人手不足の解消も期待できます。しかし、これまで、技能実習制度の活用を検討してこなかった場合などは、どのように手続きを進めれば良いのか悩んでしまうことも多いはずです。
