近年、さまざま業界において労働力不足が叫ばれるようになっています。その中でも建設業は特に人出不足の影響が顕著に表れている業界です。
建設現場で労働する人材が足りないという人手不足の状況は、年々深刻さを増し、建設企業の悩みの種となっています。そこで、日本人の建設業の担い手が不足する中、技能実習制度を活用している会社が増えていることをご存じでしょうか。
今回は、建設業界における技能実習制度の活用メリットについてご説明します。
なぜ建設業界は深刻な人手不足に直面しているのか
建設業会が深刻な人手不足に陥っている背景には次のような問題が関係しています。
労働者の高齢化と若手不足
国土交通省が2021年に発表したデータによると、2020年の建設業の就業者数はピーク時であった1997年に比べて28.1%も低下しています。また、建設業界で働く人の高齢化も進んでおり、2020年時点では建設業就業者の約36%が55歳以上、29歳以下は約12%となっています。
建設業では、屋外や高所などでの作業が求められるため、危険かつハードなイメージが強く、若い世代の就業人口が減少していると考えられています。また、建設業界では週休2日制がまだ浸透していないため、長時間労働も若い世代から敬遠される原因の1つになっています。
新規雇用の課題と解決策
建設業の人手不足を解消するためには、若い働き手を新規に雇用しなければなりません。適切な工期管理による長時間労働の是正や建設DXの活用による生産効率の向上によって、長時間労働を是正し、適切な賃金を支払えば、若い世代の就労も増えてくるはずです。
現在は、建設業界でも働き方改革を推進し、新しい技術を活用した安全な職場環境づくりが進められています。
建設業界における技能実習制度
人手不足に悩む建設企業の中には、技能実習制度を活用している会社があります。技能実習制度とは、どのような制度なのでしょうか。
技能実習制度の目的と歴史
技能実習制度とは、開発途上地域の経済発展を担う人材を育成する国際協力を目的とした制度です。技能実習制度では、日本で実習を受けた外国人が学んだ技術や知識、技能を実習終了後に自国や地域に持ち帰り、自国や地域の経済発展につなげてもらうことを目的としています。
技能実習が制度化されたのは、1993年のことです。制度が創設された時点では、外国人は「研修」という在留資格で1年間技術を習得し、その後の1年間で行う「特定活動」で技術を向上させるというものでした。
しかし、その後特定活動の期間が延長され、さらに2010年7月に施行された改正入管法によって、新たに技能実習の在留資格が設けられました。この改正により、技能実習1号、技能実習2号の在留資格があれば、実習生として仕事に従事できるようになったのです。
また、2017年11月には技能実習法が施行され、新たに在留資格として技能実習3号が整備されています。これにより、技能実習1号として1年、技能実習2号として2年、技能実習3号として2年、合計して最大5年まで技能実習制度を利用し、日本に在留することができるようになりました。
技能実習制度の課題と注意点
技能実習制度は、本来人手不足を補う手段ではなく、技能などの習得や習熟のために行われるものでなければなりません。つまり、技能実習制度の目的は実習生に技能を習得してもらうことなのです。
しかし、技能実習生に知識や技術を伝えていけば、実習生も成長し、実践の中でさまざまな技能を身につけるようになっていきます。そのため、実習と労働の線引きが曖昧となり、技能実習制度が人手不足解消の手段として捉えられている部分も少なくないのが現状です。
実習生の頑張りにより、貴重な戦力として労働してもらうことはできますが、技能実習制度の本来の目的は人手不足解消ではないことを忘れないようにしましょう。
外国人技能実習生を採用するメリット
技能実習制度は人手不足解消のための制度ではありませんが、外国人実習生を受け入れると次のようなメリットを得られます。
即戦力として活躍する実習生
技能実習生の多くは、若い世代です。そのため、体力や力仕事が求められる建設業会において、大いに能力が発揮されると期待できます。また、若く、やる気の高い技能実習生は、実習にも熱心に取り組むため、覚えも早く、積極的に技術を身につけていきます。そのため、研修を終え、実習に入るころには現場を支える大きな力となるでしょう。
長期的な労働力確保とコスト削減
技能実習制度を活用すると、従業員を募集する場合のように広告費が発生しません。
そのため、コストをかけず、若い人材を技能実習生として受け入れることができます。また、技能実習制度は最大で5年間、在留が認められているため、長期的な人材の確保にもつながります。
国際的なビジネス展開の基盤づくり
技能実習生は、実習終了後に帰国し、実習で身につけた技術を活かし、自国で活躍をすることとなるでしょう。将来的に海外への進出も検討しているようであれば、実習生として関わった人物が現地との架け橋役となり、スムーズな海外展開を実現できる可能性もあります。
技能実習生の受け入れまでの流れ
技能実習生を受け入れるためには、必要な手続きを踏む必要があります。技能実習生の受け入れ側企業に求められる要件などについて確認しておきましょう。
受け入れまでの流れ
技能実習生を受け入れる場合、団体監理型と呼ばれる方法を取るケースがほとんどです。団体監理型とは、事業組合のような監理団体が技能実習生を受け入れ、組合に加入している企業などで技能実習を実施する方式です。
技能実習生を受け入れる際には、まず監理団体に加入する必要があります。その後、技能実習計画を作成して外国人技能実習機構に提出し、認定を受けます。認定通知書を受領すると監理団体が出入国管理庁へ在留資格証明書の交付申請をし、送り出し機関がビザの発給申請を行います。
オープンケア協同組合では、建築企業での技能実習制度の活用をサポートしています。技能実習制度についてご興味がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

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受け入れ企業に求められる法的な要件と準備事項
受け入れ企業では、技能実習責任者講習を終了した技能実習責任者や実習指導員、生活指導員を選任しなければなりません。また、実習生が生活する住居や生活必需品などを準備し、日本で快適に過ごせるようなサポートも行う必要があります。
技能実習制度の今後の展望
2023年11月に行われた政府の有識者会議により、技能実習制度は今後廃止され、新たな制度の開始が見込まれています。2024年3月には、技能実習制度の廃止と新制度の創設について盛り込まれる出入国管理法など、改正案が閣議決定されています。
制度改革と育成就労制度への移行
技能実習制度に代わる新たな制度が「育成就労制度」です。育成就労制度の開始時期はまだ正式に決定されていませんが、数年後にはスタートすると考えられています。
令和6年6月21日、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布されました。
それにより、技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度を抜本的に見直し、我が国の人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されます(育成就労制度は令和6年6月21日から起算して3年以内の政令で定める日に施行されます。)
企業が今から準備すべきこと
育成就労制度では、転籍も認められる予定です。したがって、労働環境が整備されていなければせっかく育成した実習生がより労働条件のよい他の企業に転籍してしまう可能性があります。
そのため、企業では今から実習生の受け入れ環境を整備したり、実習生が実習を受けてよかったと実感できるよう、技能の向上を評価するような制度を準備しておくべきでしょう。
外国人技能実習生を活用して未来を切り開く
技能実習制度は廃止され、新たな制度がスタートする見込みです。
しかし、新制度では人材確保と人材育成を目的としたものになる見込みであり、技能実習生を受け入れ、実習によって技能を身につけさせた経験は、次の制度を利用する際にもきっと活用できるはずです。
まとめ
技能実習制度は、国際貢献を目的に制定された制度であり、建設業界においても多くの技能実習生が実習を行っています。
技能実習制度は、本来、人手不足の解消を目的とした制度ではありません。しかし、人手不足が深刻化する建設業界では、技能実習制度の活用が人手不足の解消にもつながっています。
今後、技能実習制度は廃止され、数年内に新たな制度がスタートする予定です。新制度は人材確保も目的とした制度でもあるため、技能実習制度を活用し、実習生を受け入れてきた企業はその経験を活かせるようになるでしょう。
技能実習制度についてもっと知りたい方はぜひ一度お問い合わせを

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