はじめに
日本国内で深刻な問題となっている「人手不足」に悩む黒字経営中小企業の経営者にとって、外国人労働者の雇用は新たな選択肢となり得ます。
しかし、外国人労働者の雇用は、法規制や文化の違いなどの複雑な課題も伴います。その解決策として、「外国人雇用管理主任者」を導入することで、初めての外国人雇用をスムーズに進めることができます。
ここでは、外国人雇用管理主任者の役割や外国人雇用のメリット、手続きを円滑に進めるためのステップについて解説します。
外国人雇用の課題と「外国人雇用管理主任者」の役割
外国人雇用に伴う課題と、外国人雇用管理主任者の役割について見ていきましょう。
外国人雇用に伴う課題とは?
外国人雇用に伴う主な課題には、以下のような点が挙げられます。
- 雇用手続きの複雑さ
- 言語や文化の違いによるコミュニケーションの難しさ
- 法規制の遵守とトラブル回避のための知識不足
1つずつ解説していきます。
【雇用手続きの複雑さ】
外国人雇用では、特に海外在住者から採用を検討する場合、受け入れに必要な申請書類の準備が複雑で、手間と時間がかかる場合があります。
入国管理局への在留資格認定の申請やビザの取得、入国後の法定講習実施など、慣れない手続きでスムーズに進められないケースも少なくないでしょう。就業にあたっては、在留資格に基づいた労働条件の管理も必須となります。
【言語や文化の違いによるコミュニケーションの難しさ】
外国人労働者を雇用することで、言語や文化の違いによるコミュニケーションにハードルの高さを感じるケースもあるでしょう。
多様な文化や外国人ならではの視点から、業務改善やよいアイデアが生まれやすい職場環境が期待できる反面、コミュニケーション面での難しさは懸念点となりやすいといえます。
【法規制の遵守とトラブル回避のための知識不足】
外国人の雇用は、日本国籍の人材を雇用する時と比べて法規制が厳しく、法令を遵守していない場合には罰則の対象となってしまいます。
「外国人雇用の際に注意するべきポイント」や「トラブルを未然に回避するための知識」などが不足していると、上記で挙げた課題となりやすい点でつまずいてしまう可能性があるでしょう。
外国人雇用管理主任者の役割とは?
外国人雇用管理主任者の役割については、以下の通りです。
- 法的な手続きや労務管理に精通した専門家
- 労働環境の整備と外国人の雇用管理をサポート
- 外国人労働者が職場で安心して働ける環境を構築
1つずつ解説していきます。
【法的な手続きや労務管理に精通した専門家】
外国人雇用管理主任者とは、外国人を雇用する際の労務管理や法的な手続きなどに精通した専門資格です。
外国人雇用管理主任者は2019年に新設された資格で、東京リーガルマインドが運営しており、全国200か所にあるセンターでパソコンを利用して受験する「一般受験制度」と、講習を受講することで資格取得を目指す「認定講習会制度」があります。
【労働環境の整備と外国人の雇用管理をサポート】
外国人雇用管理主任者は、雇用する外国人労働者の労働環境の整備や、外国人の雇用管理をサポートする知識と技術を有します。
各種助成制度の手続きを行う社会保険労務士や、人事労務関連の職種と併せて外国人雇用管理主任者の資格を取得することで、外国人の雇用に関する手続きや管理をスムーズに行いやすくなります。
【外国人労働者が職場で安心して働ける環境を構築】
雇用する際の手続きだけでなく、採用後にも外国人労働者が職場で安心して働ける環境づくりを実施できる知識が身につく資格となっているため、外国人の雇用を検討している企業にとって注目されている資格の1つです。
外国人雇用に伴う課題を解決し、外国人雇用管理主任者など、サポートできる資格取得を検討してでも外国人労働者を雇用するメリットについて、以下でさらに詳しく見ていきましょう。
外国人労働者の雇用によるメリット
外国人労働者の雇用による主なメリットには、以下のような点が挙げられます。
労働力確保による事業成長
少子高齢化が進む日本国内において、慢性的な人手不足に悩む企業は少なくありません。求人採用を日本国内のみに絞らず、諸外国からの採用も検討することで労働力を安定して確保することが可能となります。労働力が安定すれば、生産力やサービス提供の向上も実現しやすくなるでしょう。
また、外国人から見た疑問や新たな視点、日本国内にいるだけでは得られないようなスキルなどがもたらされることで、外国人雇用を推進した企業の競争力が向上するメリットも期待できます。
外国人労働者がもたらす多様性の活用
外国人労働者の雇用は、企業内において自然に異文化へ触れる機会へと繋がります。外国人の雇用によって、組織や企業側も多様性のある環境から刺激やアイデアを得るきっかけとなりやすいのです。
こうした環境の変化、多様性の活用により、新たなビジネスチャンスの創出や、海外をターゲットにしたグローバル市場への展開へと繋がる可能性が広がります。
初めての外国人雇用をスムーズに進めるステップ
外国人雇用の課題とメリットがわかったところで、初めての外国人雇用をスムーズに進めるためのステップについてご紹介します。
外国人雇用管理主任者の資格取得・活用
外国人雇用をスムーズに進めるなら、外国人雇用管理主任者の資格取得をおすすめします。
外国人雇用管理主任者の資格を取得することで、外国人雇用に必要な手続きや従事してほしい業務が可能な在留資格の確認、適切な求人方法などの基礎知識を理解することが可能です。
採用後の労務管理や育成、マネジメントなどの知識も身につくため、サポート業務の負担を軽減することができます。資格取得が難しい場合や、資格取得と並行して採用も進める必要がある場合には、外部のコンサルタントや専門家のサポートを受けるのも1つの方法です。
外国人労働者を安心して雇うための準備
外国人労働者を安心して雇うために必要な準備としては…
- 適切な求人方法の確認
- 法律に則った契約、申請
- 労働環境や福利厚生の整備
- 言語サポートや文化研修の実施
などが挙げられます。
既に日本で生活している、在留カードを保有している外国人を採用したい場合と、現在外国に居住していて、これから技能制度の認定を受けて渡航し採用する場合とでは、手続きに必要な書類や流れが異なります。
また、雇用対策法や入管法など、法律で定められた届出や申請内容、従事する業務などは遵守する必要があるため、適切な契約、届出ができているかの確認も重要です。
採用後は、外国人労働者が職場環境へ馴染むよう、労働環境や福利厚生の整備も行います。日本語や日本の文化に関するサポートや研修制度も実施し、受け入れ側も多様性を受け入れる体制を整えていくことで、働きやすさや定着率も高まるでしょう。
まとめ
外国人労働者の雇用は人手不足を解消する手段だけでなく、新たなビジネスチャンスやアイデア創出の機会としても、中小企業の成長にとって大きなチャンスと捉えることができます。
言語の壁や文化の違いによる不安、手続きの煩雑さといった外国人雇用の課題には、外国人雇用管理主任者の資格を活用することで、解決へと繋げることが可能です。
初めての外国人労働者の雇用をスムーズに進めることで、人手不足の解消と事業の発展の両面でメリットが期待できるでしょう。
