特定技能で外国人材を受け入れた企業には「定期報告義務」が課せられます。本記事では、提出書類や期限、注意点をわかりやすく整理し、不安を感じる担当者様でも安心して対応できるようサポート体制もご紹介します。
特定技能の定期報告とは何か?
定期報告が求められる法的背景と目的
特定技能制度では、外国人材の受け入れ企業に対し「定期報告義務」が課せられています。これは、制度の適正運用と外国人材の保護を目的としたものであり、行政が雇用状況や支援の実施内容を確認するために行われます。
定期報告を怠ると、制度違反と見なされ、最悪の場合は在留資格の更新拒否や支援機関としての登録取消といった行政処分に至る可能性があります。企業にとっては、継続的な外国人雇用の信頼性を保つためにも重要な義務です。
定期報告と定期届出・随時届出の違い
特定技能に関連する報告義務には、内容と目的が異なる3種類があります。それぞれの違いを整理すると、以下のとおりです。
- 定期報告
年1回の頻度で、雇用状況や支援実施内容をまとめて提出。 - 定期届出
支援計画や継続的な受け入れ体制に関する定期的な届け出。 - 随時届出
離職・転職・帰国などの変更があった際に、その都度提出。
これらは報告タイミングや提出資料も異なるため、混同しないように注意が必要です。
誰が・いつ・どのように提出するのか
定期報告の提出者は「特定技能所属機関」である企業が基本です。支援業務を登録支援機関に委託している場合は、その機関が提出を代行するケースもあります。
提出時期は「年度単位」で設定されており、多くの場合、受け入れ開始から1年ごとに報告のタイミングが訪れます。報告の期限はおおむね年度終了後2〜3カ月以内に定められており、提出忘れを防ぐには計画的な管理が必要です。
報告方法には「書面による提出」と「一部地域でのオンライン提出」があり、企業の所在地や管理体制によって提出方法が変わります。
2025年制度改正における変更点
2025年4月の制度改正により、定期報告の実務には大きな変更が加えられました。これまで四半期ごとに行われていた報告が、年1回へと簡素化され、企業側の事務負担は軽減されました。ただし、1回分の報告内容における正確性と網羅性の重要度が高まり、手続きの質が問われるようになっています。
また、面談記録の取り扱いについても見直しが行われました。これまでは記録方法や保存形式が曖昧でしたが、新制度では様式の統一が進められ、所定のフォーマットでの保管と提出が義務化されています。面談記録の欠如や記載不備は、支援義務違反とみなされる可能性があるため、徹底が求められます。
さらに、オンライン提出の運用が本格化しつつあり、一部地域ではすでに導入されています。将来的には全国展開が見込まれており、手続きの効率化と利便性向上に寄与することが期待されます。ただし、地域差や提出先の対応状況によっては、従来の書面提出との併用も必要になるため、最新情報の把握が不可欠です。

定期報告に含まれる5つの提出書類
支援実施状況報告書(様式1号)
定期報告で最も中心的な書類が、支援実施状況報告書(様式1号)です。この書類では、特定技能外国人に対して実施した支援の内容を詳細に記載する必要があります。法務省が定めた支援項目に基づき、定住支援・相談対応・生活支援などが適切に行われているかが確認されます。
報告内容の例としては、生活ガイダンスの実施日、母国語による案内の有無、職場訪問の頻度、日本語教育の実施状況などがあります。支援記録が曖昧だったり、形式的に済ませているとみなされた場合、改善指導の対象となる可能性があります。
登録支援機関を利用している場合も、最終的な責任は所属機関にあるため、報告内容の確認と保存には注意が必要です。
雇用契約書・出勤簿・賃金台帳など
報告には、雇用状況に関する以下のような補足書類の提出も求められます。
- 雇用契約書(写し)
労働条件が明記された契約内容。労働時間・賃金・福利厚生などが記載されていること。 - 出勤簿
労働実績を示す書類。欠勤や早退、残業時間も含めて把握できるようにしておく。 - 賃金台帳
支払賃金の実績記録。毎月の給与支給額、控除内容、手取り額などが明記されているもの。 - 給与明細(提出が必要な場合もあり)
手当の内訳や支払い実績を確認できる資料。
これらの書類は、外国人労働者が日本人と同等の労働条件で雇用されているかを判断する重要な根拠となります。原本ではなく写しで提出できますが、改ざん・加工のない正確な情報が求められます。
定期面談記録の保管と提出
制度上、外国人労働者との定期的な面談が義務付けられており、その記録も定期報告時に提出が必要です。面談では、就労状況や生活面の悩み、職場での人間関係などを聞き取ることが求められます。
面談記録には、日時・場所・担当者・面談内容・対応措置の有無などを明記します。とくに2025年の制度改正以降は、形式だけでなく内容の質も評価対象になっており、「一方的な聴取」や「記録の流用」は支援義務違反とされる可能性もあります。
適切な記録保存と第三者によるチェック体制の構築が、制度運用の信頼性を高めるポイントです。
提出前に確認すべき記載ミスと注意点
定期報告は複数の書類を取りまとめて提出する必要があるため、事前の確認が非常に重要です。提出前に見落としやすい注意点は次のとおりです。
- 記入漏れや記載ミス(例:支援日時が不明瞭、雇用条件に矛盾がある)
- 様式の古いバージョンを使用している
- 押印漏れ、提出先の誤記載
- 提出期限の誤認や遅延
これらはすべて、再提出や行政からの問い合わせの原因となり、結果として企業側の信用低下にもつながります。提出直前には「第三者によるチェック」も含めたダブル確認体制を整えておくと安心です。
提出期限と報告サイクルの管理方法
報告のタイミングと年度ごとの整理
定期報告は、雇用の開始日を基準とした「年度単位」で管理されます。たとえば、4月に外国人材の就労が始まった場合、その年度は翌年3月までとされ、報告は年度末後の指定期限内に提出する必要があります。
提出時期は地域や状況によって若干異なるものの、一般的には年度終了後の2〜3カ月以内に設定されています。これにより、企業にはある程度の準備期間が確保されますが、報告を後回しにすると期限を失念する恐れがあるため、あらかじめ提出スケジュールを組んでおくことが大切です。
また、複数名の外国人を雇用している企業では、それぞれの就労開始時期に応じて「複数の年度管理」が必要になるケースもあります。これを管理するには、台帳や表計算ソフトを活用した記録整備が欠かせません。
地方出入国在留管理官署ごとのルール
定期報告の提出先は、企業の所在地に応じた管轄の地方出入国在留管理官署です。提出に関しては、以下のような注意点があります。
- 提出先が本社所在地ではなく「就労場所を所管する出入国在留管理官署」である場合がある
- 官署によっては「郵送のみ受付」「窓口受付限定」「事前予約必須」などの運用ルールが異なる
- 様式の受付バージョンが異なることもあるため、提出前に確認が必要
提出先を誤ると差し戻しとなり、再提出の手間や期限超過につながるリスクもあるため、地方局ごとの運用を事前に把握しておくことが重要です。
オンライン提出の可否と今後の拡張性
制度の見直しに伴い、定期報告の提出方法としてオンライン対応が一部地域で導入されています。NACCS(出入国管理情報システム)などを利用した申請は、郵送や持参に比べて効率的であり、人的ミスの削減にも効果があります。
ただし、現時点では全国で統一された運用がされているわけではなく、提出先官署によっては対象外になります。企業側は「自社所在地の管轄がオンライン受付に対応しているか」を必ず事前に確認する必要があります。
将来的には全国一律での導入が期待されており、企業としても早期のデジタル対応体制を整備しておくことで、長期的な事務負担軽減につながります。
社内管理を楽にするスケジュール設計
定期報告は毎年確実に発生する業務のため、社内で継続的に対応できる体制を構築することが求められます。以下のような工夫を取り入れることで、ミスを防ぎ、作業の平準化が可能になります。
- 報告スケジュールを年度初めに社内共有し、カレンダーで可視化する
- 提出必要書類のチェックリストを作成し、対応漏れを防止する
- 報告書テンプレートと過年度の提出記録を管理台帳として残す
- 登録支援機関との打ち合わせを事前に設定し、役割を明確にする
こうした対策を講じることで、報告準備が属人化せず、担当者が変わってもスムーズに引き継げる体制づくりが可能になります。

定期報告で発生しやすいミスと対策
報告書類の記載漏れや不備
報告書類の記載漏れや不備は、提出後の差し戻しや確認依頼の原因となり、結果として大幅な手戻りにつながります。特に多いのは、報告様式の書式不備や記入漏れ、誤記、添付資料の不足です。以下のようなミスが頻発しています。
- 支援実施記録の記載が曖昧または未記入
- 支援実施日や担当者名の記載忘れ
- 様式が古いバージョンで提出されている
- 雇用契約書の写しが不足している、もしくは最新版でない
これらのミスを防ぐには、最新の様式を確認すること、報告前にダブルチェックを行うこと、支援担当者と実務担当者の連携体制を確保することが不可欠です。
面談記録の保存義務違反
面談記録は、制度上の義務として定期的に実施され、記録に残すことが求められます。にもかかわらず、「実施していない」「記録を取っていない」「様式が統一されていない」などの不備もよくあるケースです。
記録が不十分だと、実際に面談を実施していたとしても、支援義務違反とみなされるおそれがあります。さらに、記録を残していない場合には、トラブル発生時に証明資料として活用できず、企業側のリスクが高まります。
記録を取る際は、定型様式の活用と記録保管のルール化が重要です。登録支援機関を活用している場合でも、自社での保管・確認義務は残るため、依存しすぎない運用が求められます。
提出先の誤認・期日超過
報告の提出先や期限を誤るケースも後を絶ちません。とくに以下のようなミスが目立ちます。
- 管轄の出入国在留管理官署を間違えて送付してしまう
- 郵送では間に合わない日程にもかかわらず対応が遅れる
- 報告対象となる年度や支援対象者を誤認する
- 提出期限を担当者が把握しておらず、報告自体を失念
こうしたトラブルは、最悪の場合、在留資格の更新に支障をきたす事態にもつながります。提出先の確認、提出期限のリマインド設定、提出記録の社内共有など、予防的な管理体制の構築が求められます。
報告業務の負担を軽減する支援機関の活用
登録支援機関が代行できる業務
企業が登録支援機関と契約することで、定期報告に関連する煩雑な業務の多くを委託することが可能です。具体的に代行できる業務は次のとおりです。
- 支援実施状況報告書の作成と提出
- 定期面談の実施と記録作成
- 提出書類の整備と様式チェック
- 管轄官署への提出手続き(書面またはオンライン)
- 提出スケジュールの管理と企業へのリマインド通知
これらを支援機関に委ねることで、企業はコア業務に集中しつつ、報告義務違反のリスクも抑えることができます。特に初めて外国人材を雇用する中小企業にとっては、大きな負担軽減となります。
自社対応と外部委託のメリット比較
定期報告を自社対応で行う場合と、登録支援機関に委託する場合では、それぞれにメリットと留意点があります。
自社対応では、内部でノウハウを蓄積できるという利点があります。一方で、報告に必要な知識や書類作成スキル、更新情報へのアンテナなどが求められ、人的コストや管理ミスのリスクも高まります。
外部委託では、専門的な知識をもった機関による正確かつ迅速な対応が期待でき、特に制度変更への対応スピードという点で安心感があります。ただし、報告内容に対する最終責任は企業側にあるため、「任せきりにしない」管理体制も必要です。
トラブルを防ぐ第三者チェックの重要性
定期報告は、「誰かがやれば済む業務」ではなく、「企業としての信頼を守る手続き」です。そのため、報告内容に誤りや漏れがあれば、監督官庁からの指導や審査落ちなどの結果に直結します。
こうしたリスクを避けるためには、支援機関が作成した報告書に対して、企業側でも第三者チェックを行う体制を整えておくことが大切です。具体的には、支援機関からの提出前ドラフトを社内で確認する、担当者間でダブルチェックを行う、支援内容の記録を社内にも保管しておくといった方法が有効です。
記載内容の整合性を社内外で検証することで、信頼性の高い提出書類が完成し、後々のトラブルも未然に防げます。
オープンケアのサポート内容と強み
オープンケア協同組合では、定期報告を含む受け入れ支援業務をトータルでサポートしています。以下のような特長があります。
- 初期費用0円・月額2万円という業界初の低価格プラン
- 書類作成、面談実施、支援記録の保存までフル対応
- Zoomによる外国人との事前コミュニケーション機会を提供
- 出入国在留管理庁の運用要領に準拠した運営体制
- インドネシア人材に特化し、定着率が高い
定期報告に関する不安や手間を大幅に軽減し、安心して外国人材の雇用を継続できる環境を整えることが可能になります。
まとめ
特定技能の定期報告は、単なる事務作業ではなく、外国人材の適正な雇用を証明し、制度を継続的に利用するための重要な手続きです。提出期限の管理や書類の整備、面談記録の作成には実務上の注意点が多く、初めて対応する企業にとっては不安がつきまといます。
制度改正により報告の頻度は年1回に簡素化されましたが、そのぶん内容をかなり重視されるようになっています。オープンケアのような信頼できる支援機関を活用すれば、手続きの負担を軽減しつつ、法令を遵守した運用をすることが可能です。定期報告に不安がある企業こそ、外部支援の力を上手に取り入れて定期報告を乗り越えましょう。