近年、国内の中小企業において人手不足はますます深刻化しています。特に建設業、製造業、宿泊業など、多くの企業が労働力の確保に苦慮している状況です。
このような背景の中、政府が導入した「特定技能1号」という新しい在留資格は、外国人労働者を即戦力として活用できる絶好のチャンスを提供しています。
本記事では、これまで外国人労働者の雇用を検討してこなかった中小企業の経営者に向けて、特定技能1号の基本情報やその導入メリット、具体的な採用ステップをわかりやすく解説します。
これを機に、外国人労働者を活用した持続的な企業成長のための新たな道を探ってみてはいかがでしょうか。
特定技能1号とは?中小企業にとってのメリット
特定技能1号とはどのような制度なのか、その概要と中小企業にとってのメリットなどについて解説します。
特定技能1号の基本概要
特定技能とは、2019年に導入された在留資格の1つで、日本国内の人手不足解消を目的に創設されました。特定技能には1号と2号があり、2号では熟練した技能が要求されるのに対し、1号では相当程度の経験や知識を必要とする技能水準が求められます。
特定技能1号が適用される職種
特定技能には対象となる職種が定められています。2024年9月現在、特定技能1号が適用される職種は以下の16分野です。※青下線は「特手技能2号」の受け入れ分野
【特定産業分野一覧(16分野)】
①介護
②ビルクリーニング
③工業製品製造業
④建設
⑤造船・舶用工業
⑥自動車整備
⑦航空
⑧宿泊
⑨自動車運送業
⑩鉄道
⑪農業
⑫漁業
⑬飲食料品製造業
⑭外食業
⑮林業
⑯木材産業※特定技能1号は16分野で受入れ可。特定技能2号の受入れ分野は下線の11分野(工業製品製造業については一部業務区分が対象)において受入れ可能になりました。
※分野別の詳細はこちら
※2024年3月29日の閣議決定及び同年9月の関係省令施行により、特定産業分野に「自動車運送業」、「鉄道」、「林業」、「木材産業」の4分野が追加されたとともに、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」が「工業製品製造業」に名称変更等されました。
採用までの流れ
特定技能1号の在留資格取得者を採用するまでの大まかな流れは、以下のようになります。
① 受け入れ要件の確認
② 募集、面接
③ 採用~法定書類の作成~申請
④ 就業スタート
ステップごとに解説していきます。
①受け入れ要件の確認
採用する側の企業が特定技能受け入れの要件を満たしているかを、まずは確認します。納税義務を果たしているか、対象分野の職種であるか、過去の受け入れで行方不明者や解雇者が出ていないかなど、一定要件についてチェックします。
②募集、面接
受け入れ要件を満たしていたら、希望職種や受け入れ人数などをリストアップし、求人の募集を行います。募集には国内在住の外国人を募集する方法と、海外在住の外国人を募集する方法に大きく分けられます。
また、特定技能1号は技能実習2号を修了した外国人も取得を目指せる在留資格です。既に特定技能1号を取得している外国人を募集する方法に加え、技能実習2号を修了した外国人を募集する方法もあります。
③採用~法定書類の作成~申請
面接後に採用が決定したら、特定技能による雇用契約を結びます。特定技能雇用契約は、法令に則った内容で作成する必要があるため注意が必要です。作成後は出国在留管理庁へ提出します。
その他、外国人支援計画や在留資格認定申請、海外から募集した場合はビザ申請や渡航の手配など、さまざまな手続きが必要です。
④就業スタート
すべての申請や策定が完了したら、配属先で就業がスタートします。住まいや生活必需品の手配、各種研修などに加え、配属先でも外国人を受け入れる体制を整えます。
外国人労働者の採用で得られる中小企業のメリット
外国人労働者の採用は大手企業だけでなく、中小企業にとってもメリットの多い選択肢の1つです。中小企業が外国人雇用で得られる大きなメリットとしては…
- 即戦力としての活躍が期待できる
- 長期的に労働力が確保できる
などが挙げられます。
特定技能の在留資格を取得するには、日常生活で支障がない程度の日本語能力が必要となります。日本語とネイティブである母国語を話せることで、インバウンドへの対応や海外と関わる業務などでは、即戦力としての活躍が期待できます。
また、外国人ならではの視点やアイデアでは、企業内に多様性を生み出し、新たなビジネスチャンスを作るきっかけになる可能性もあります。
技能実習生は通算5年という在留期間の期限がありますが、特定技能では在留期間に上限がなく、更新すれば長期的に就業することが可能です。
日本国内だけではなかなか希望する人材が集まらない業界の中小企業にとって、外国人労働者の採用は検討しておきたい人材確保の方法ではないでしょうか。
外国人労働者を検討すべき理由とは?
外国人労働者を検討すべき理由について、さらに詳しく見ていきましょう。
慢性的な人手不足に対応するための新しい手段
特定技能1号の導入事例として、外食業、宿泊施設など、人手不足が深刻な業種で導入を行った結果、人手不足が解消して経営が安定化した事例があります。
外国人労働者にとって働きやすい環境を整備することによって次の採用にもつながり、企業のグローバル化も進めることができました。
こうした事例からもわかるように、外国人労働者の採用は慢性的な人手不足へ対応するための新しい手段となり得るのです。
外国人労働者がもたらす企業への影響
外国人労働者がもたらす企業への影響は、安定した人材確保に限りません。外国人労働者の受け入れによって、法令を遵守したクリーンな職場を実現するなど、労働環境の改善にもつながりやすいでしょう。
日本人だけでは気がつきにくい視点から業務が改善されたり、生産性向上やコスト削減などにつながったりする可能性も期待できます。
特定技能1号で外国人労働者を採用するためのステップ
ここでは、海外在住の外国人を特定技能1号で採用する際の大まかなステップについて見ていきましょう。
特定技能1号ビザの取得条件と申請手続き
受け入れ要件等基本事項の確認後、現地面接を終えて採用が決まったら、雇用契約書や在留資格認定申請、ビザの申請などを行います。
特定技能1号としてビザ申請する際には、特定技能試験と日本語検定に合格する必要があります。なお、技能実習2号を良好に修了している場合は受験が不要となります。
日本入国のための渡航チケット手配やスマートカードの取得など、さまざまな手続きや申請が必要となるため、はじめて採用を検討する場合は専門家のサポートを活用しましょう。
採用後の支援体制とサポート
入国後は、外国人労働者の定着を促すために必要な支援も行います。慣れない生活に対する不安をヒアリングしたり、言語や文化の違いを乗り越えるためのサポート体制も整えておきましょう。
特定技能1号を活用し、未来の労働力を確保する
特定技能1号を活用して未来の労働力を確保するための成功のポイントや、今後の展望などについてご紹介します。
導入事例から学ぶ成功のポイント
導入事例として、人手不足が深刻だったとある宿泊施設へ外国人労働者の受け入れを実施し、安定して受注を受けられるようになりました。
新たに外国人労働者を受け入れることで組織の連携や業務効率を見直す機会にもなり、日本人従業員が外国語を学ぶモチベーションにもつながっています。
このように、過去の導入事例を参考に、受け入れ後のイメージを描いてみましょう。
今後の展望と期待される効果
特定技能1号の活用はもちろん、特定技能2号の職種拡充や新たな在留資格の創設など、今後も外国人雇用においてはさまざまな法改正が期待される見通しです。
外国人雇用を通じて人手不足を解消し、持続的な企業成長の鍵として活用してはいかがでしょうか。
まとめ
特定技能1号で従事できる職種は幅広く、一定以上の技術や語学力を持ち「日本で働きたい」と考える意欲的な若年層が長期的に雇用できるため、中小企業にとっては大きなメリットとなります。